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死ぬまで、やります

小説002 / 三話

現代人には、好きな人がいない。

そんな売り文句が流行っていて、ぼくもその中の一人だ。
けれど、そう言う著者の大半は恋愛における好きな人のことを言っていて、ぼくの場合はもう、恋慕なんて関係なしに好きな人がいない。
いや、いるのかもしれない。自分の中で良い感情を持っている人に対して、好きだという評価を付けることはできる。できるけれど、しかしそれは、好きな人を誰かに挙げなければいけない状況でしか生じ得ない。
 
まあ、人間そんなもんか。
 
そんな自分の事を淡白だとか、冷たいだとか、そんなふうに思ったことはない。それが自分なのだし、周りの好きだという感覚なんてわからないのだから、ぼくが淡白なのか、冷たいのかなんて決めることはできない。
ただ、周りからそう思われるかもしれない、という可能性に気がついたのは、そんなぼくの考えを聞いた友達が「彼女が出来たらそういうこと言わないほうがいいよ、冷たい人間だと思われるから」と言っていたからで、こんな僕の考えを誰かに言うことなんてほとんど無いだろうから、ぼくはきっと、周りからそう思われることはないだろう。
普段の生活で冷たい人だと思われるような行動は慎んでいる――というより、誰かに助けを求められた時や、手伝いが必要だと思われるときに手を貸すことは厭わない人間だから、むしろ優しい人間だと思われていると思う。
思われていたところで、何がどう変わるわけでもないのだが。