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家賃3.8万円

死ぬまで、やります

小説002 / 一話

政令指定都市とは言うが、夜の九時でも両手を広げて歩ける程に人は歩いていない。これくらい人が少ないなら、この街でなら唯一の存在になれるだろうか。

 

駅前よりは人が密集している三両編成の電車に乗り込み、四人掛けの椅子に座った。目の前の高校生のカップルが僕がいるにもかかわらず愛を囁き合っては(本当は愛なんて囁いてはいないのかもしれない)歳から不相応な接吻を交わしている。あまり興味がないけれど、窓の外を見ようとしても、反射してその姿が見えるからいっそ、二人を見ていることにした。

 

四駅くらいして、彼女の方が別れの挨拶をし、電車を降りて行った。窓の外からも彼氏に向かい、手を振って、間も無くして電車は走り出した。

手を振る相手を置いて走り出した電車に残された彼の方は、スマートフォンを取り出し、何かを打ち込み始めた。

置いて行った彼女へ連絡しているのだろうか、それとも愛について調べているのだろうか、興味は無いから、窓の外の景色に集中することにした。