目覚めた頃には、もう筋肉マッチョと木の枝みたいな女は部屋にはいなかった。
代わりに飲みかけのハイネケンが置いてあって、僕が飲んだのか、他の誰かが飲んだのか覚えていなかったけれど、生温くなったそれを飲み干すと少しだけ緊張が溶けたような気がした。
ゴスロリ少女とのデートはどこかに遊びに行くというものではなく、まずは飲みにいこうというものだった。
夜七時の新潟駅前はそれなりに人通りも多かったが、彼女の姿ならすぐに見つけることができるだろうと思っていたが、なかなか姿を現さない。
約束の時間から十分が過ぎた頃、帰りの電車をいつにしようかと考え始めていた。
連絡先も聞いていなかったし、もう五分待っても現れなければ帰ろうと考えていた。
その前に電気屋で働く後輩の姿を見てからにしようと思った僕は、早めにこの場所から離れることにし、四十五度、回れ右をして、その姿を見つける。
白いワンピースを着ているのに、キャップ帽というファッション界の申し子みたいな格好をしているその女性は、この前のゴスロリ少女だった。
僕たちの距離は十メートル程度しか離れていなかったのに、互いに気がつかなかったのだ。
僕はもしかしたら怒られるかもしれないという思いを抱えながら、そう思うことによって長く感じるその短い距離を詰める。
横に立ち立ち止まる僕に気がついた彼女は、満面の笑みを見せて、遅いよ、と言った。
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